妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜
 魔道具の魔力込めも一時間ほどで終わり、問題ないと判断された私。翌日からレナートさんの引継書を確認しながら仕分けを始めた。
 非常にわかりやすく書かれていたので、たまに現れる例外以外はすぐに仕分けができるようになる。三日も経てばレナートさんからもお墨付きをもらい、一週間する頃には例外の書類も問題なく仕分けることができるようになっていた。
 
 そして一ヶ月もすると、仕分け以外の仕事もできるようになっていた。
 業務が増えた分、効率的に進めるために段取りも考え始めたのだ。

 基本的に朝は書類の回収をしながら、毎日魔力込めを行う必要のある魔道具に魔力を込める。それが終わると執務室で仕分けを始め、採決し終えた書類を振り分けながら各部署へと届けていく。
 食事後には一週間に一度魔力を込める魔道具のいくつかに魔力を込め、書類を回収しつつ各部署からのお願いを叶える。
 嘆願は大体簡単なものだ。インクがない、とか書類が欲しいとか。特に財務は多忙らしく、二日に一度は足りない用品を渡しに行っていた。

 もちろんノアとも会っている。

 お昼はアダン様とノアと一緒に食べることは変わらない。
 執務室の前の庭には、テーブルと椅子が新たに設置され、昼になると皆がこの場所で食事を摂っている。持ってくるのが大変でないだろうか、と思ったこともあったが、最近はノアが食事を持ってきてくれるので、そこまでの負担ではないらしい。
 もちろん、食器を返すのは私とノアの仕事なので、他の方の手を煩わせることはない。
 
 毎日がとても充実していた。
 「物置令嬢」「引きこもり令嬢」と呼ばれた頃の私の面影はもうない。
 
 いつも見守ってくれるアダン様、仕事を優しく教えてくれるレナートさん。
 たまに様子を見て喜んでくれるセファーさん。いつも慕ってくれるノア。
 最初は心配していたけれど、最近は私の成長を喜んでくれるイルゼさん……

 皆に囲まれて、私は幸せを噛み締めていた。
 
 ……だからかつての冷え切った家族の記憶など、いつの間にか私の意識からは消え去っていたのだ。――あの時までは。
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