訳あって、推しに激似のクールな美容外科医と利害一致のソロ活婚をしたはずが溺愛婚になりました
「いや、もうずいぶん昔のことで、私たちもすっかり忘れていたのですが――」
ふたりの話によると、今日と同じように、国立能楽堂での一月定例公演を観劇した央輔の祖父は央輔を伴って泰臣の元へ新年の挨拶に赴いたらしい。
ちょうど人間国宝になったばかりの頃だったのもあり、泰臣は多忙を極め分刻みのスケジュールを熟していたらしいのだが、後援会の後押しにより実現したのだという。
その時に、母に抱かれた一歳に満たない杏璃と九歳の央輔とが初対面していたというのだ。
「――ええっ⁉ 央輔さんと私が?」
「そういえば、そんなことがあったような気が……。そうか、そうだったのか」
さすがは医者だけあり、記憶力にも長けているらしい央輔は、心当たりがあるようだ。
けれど、赤子だった杏璃には心当たりがあるわけもなく、ただただ驚くばかりだ。
そこに再びその時の頃を懐かしむようにふたりの祖父が口々に証言する声が放たれた。
驚くことに、その際に赤子が珍しかったのか、央輔は杏璃に興味津々で顔を覗き込み、ふっくらとまあるい頬を指で恐る恐る突いたりしていたらしいのだが……
いつもは人見知りするはずの杏璃は、泣きもせずに機嫌良く央輔の指を小さな手でギュッと摑んだきり離そうとしなかったというのだ。
央輔は、いつになく狼狽えながらも、杏璃に泣かれるのは嫌だったようで、杏璃が納得するまで微動だにせず静かに固まっていたらしい。
それがおかしいやら微笑ましいやらで、泰臣と祖父をはじめ杏璃の母と周囲の大人たちは、声を抑えつつも顔を見合わせて微笑み合っていたのだという。
その頃から杏璃はもしかすると見目の優れた央輔に魅了されていたのかもしれない。
ということは、杏璃がアーサー王子に夢中になっていたのも実は、アーサー王子を通して央輔の面影を見ていたのかもしれない。
いや、かもしれないではなく、実際そうだったに違いない。
驚きを隠せずにいた杏璃だったが、ふたりの祖父の話に耳を傾けているうち、央輔との出会いがただの偶然ではなく、運命だったのだと確信していた。
しかも、推し繋がりで結ばれていたなんて、お互いが唯一無二の推しであるふたりにピッタリではないか。
「そうか、俺と杏璃はその時に赤い糸で結ばれていたのかもな」
「そうかもしれませんね。ということは、推し繋がりで結ばれてたってことですよね?」
「ああ、そういうことになるな」
「わぁ、凄い。推し活様々ですね!」
「お互いが唯一無二の推しである俺たちにピッタリだな」
「ふふっ、そうですね」
央輔からも同意を得られて、杏璃の胸は溢れんばかりの幸福感で満たされてゆく。
家族にあたたかく見守られながら、杏璃と央輔は改めてお互いが唯一無二の推しであると同時に、運命という固い絆でも結ばれていることを確信したのだった。
~FIN~
ふたりの話によると、今日と同じように、国立能楽堂での一月定例公演を観劇した央輔の祖父は央輔を伴って泰臣の元へ新年の挨拶に赴いたらしい。
ちょうど人間国宝になったばかりの頃だったのもあり、泰臣は多忙を極め分刻みのスケジュールを熟していたらしいのだが、後援会の後押しにより実現したのだという。
その時に、母に抱かれた一歳に満たない杏璃と九歳の央輔とが初対面していたというのだ。
「――ええっ⁉ 央輔さんと私が?」
「そういえば、そんなことがあったような気が……。そうか、そうだったのか」
さすがは医者だけあり、記憶力にも長けているらしい央輔は、心当たりがあるようだ。
けれど、赤子だった杏璃には心当たりがあるわけもなく、ただただ驚くばかりだ。
そこに再びその時の頃を懐かしむようにふたりの祖父が口々に証言する声が放たれた。
驚くことに、その際に赤子が珍しかったのか、央輔は杏璃に興味津々で顔を覗き込み、ふっくらとまあるい頬を指で恐る恐る突いたりしていたらしいのだが……
いつもは人見知りするはずの杏璃は、泣きもせずに機嫌良く央輔の指を小さな手でギュッと摑んだきり離そうとしなかったというのだ。
央輔は、いつになく狼狽えながらも、杏璃に泣かれるのは嫌だったようで、杏璃が納得するまで微動だにせず静かに固まっていたらしい。
それがおかしいやら微笑ましいやらで、泰臣と祖父をはじめ杏璃の母と周囲の大人たちは、声を抑えつつも顔を見合わせて微笑み合っていたのだという。
その頃から杏璃はもしかすると見目の優れた央輔に魅了されていたのかもしれない。
ということは、杏璃がアーサー王子に夢中になっていたのも実は、アーサー王子を通して央輔の面影を見ていたのかもしれない。
いや、かもしれないではなく、実際そうだったに違いない。
驚きを隠せずにいた杏璃だったが、ふたりの祖父の話に耳を傾けているうち、央輔との出会いがただの偶然ではなく、運命だったのだと確信していた。
しかも、推し繋がりで結ばれていたなんて、お互いが唯一無二の推しであるふたりにピッタリではないか。
「そうか、俺と杏璃はその時に赤い糸で結ばれていたのかもな」
「そうかもしれませんね。ということは、推し繋がりで結ばれてたってことですよね?」
「ああ、そういうことになるな」
「わぁ、凄い。推し活様々ですね!」
「お互いが唯一無二の推しである俺たちにピッタリだな」
「ふふっ、そうですね」
央輔からも同意を得られて、杏璃の胸は溢れんばかりの幸福感で満たされてゆく。
家族にあたたかく見守られながら、杏璃と央輔は改めてお互いが唯一無二の推しであると同時に、運命という固い絆でも結ばれていることを確信したのだった。
~FIN~