手を、つないで
10.航
ーーーさっき、ミーティングで聞きました。うちのチームの作業、お手伝いしてくださるそうですね。
ーーー助かります
ーーーでも、無理はしないでくださいね
メッセージが、彼女の声で、頭の中に響く。
「松永さん」
広瀬だ。
「高井戸さんから聞きました。手伝ってくれるって。助かります。ありがとうございます」
「ああ……そんな大したことじゃないから」
本当のことだ。それに、こっちの都合が多分に入ってるし。
「助かりますけど、自分の仕事大丈夫ですか?高井戸さん、こっちが終わったら手伝うって言ってましたから。無理はしないでくださいね」
『無理はしないでくださいね』
また彼女の声が聞こえた。
「松永さん?」
ハッと、正気に戻る。
「いや、うん、大丈夫」
「ならいいんですけど。ああそうだ。来週末、納品が終わったら、この件の打ち上げするんです。松永さんも良かったら来てください。後で出欠取りますんで、考えといてください」
「わかった」
「よろしくお願いします」
広瀬が去っていく。
……やった。正式に打ち上げに行ける。
思わず口角が上がる。
正面モニターの上に、高井戸の顔があった。
「松永さん、よろしくお願いしまーす」
「……おう」
高井戸の顔が何かを含んでいる。でも突っ込んではこない。
気付かれ……てるな。あの時、察して引いてくれたんだから。何も言ってこないのは、多分見てる方がおもしろいと思ってるからだ。そして、俺から言うのを待っている。
悔しいからギリギリまで黙っててやろう。
感謝はしてるぞ、高井戸。