和霊
ビジネスホテルの椅子は、恋から背中、首筋の辺りまでを硬直させた。立ち上がりトクホのマークのような伸びをして、それを和らげた。朝食と昼食を抜いたせいもあって、強めの空腹感があった。今日はがっつりと、しかし安く夕食を済ませようと決意した。
ホテルから歩いて牛丼チェーン店に入った。そこで、かつぶしオクラ牛丼の大盛をテイクアウト注文した。トッピングに山かけと生卵を追加し、傍にあった紅ショウガの子袋を4つほど持って、部屋に戻った。ほとんど噛まずに平らげると、ユニットバスでシャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かし、スウェット姿で夜の街を歩いた。
特に行く当てはなかった。宇和島の冬が、僕の温もりに満ちた身体に付け入るように、入り込んでは、突き抜ける。魂が交差しているようなそんな感覚に似ていた。須賀川の流れる太鼓橋までやってきていた。渡った先には、和霊神社がある。
太鼓橋の段になったところの、隅の方に、1匹の猫がいた。猫は僕を見てもさほど驚きもせず、かと言って興味も示さなかった。人に慣れた野良猫といった感じで、猫の中である程度の一線を引いているような、少しガードの高い女性を思わせた。僕は警戒心を解き放ち、裸の心で猫に近づいた。猫は動じず、来たければくればいい。ただし、あまりにもずけずけと入ってくるようであれば、抵抗するぞという、言葉ではない何かで、伝えてきた。心得ていますとも。少し撫でさせてくださるだけで十分ですので。あい、わかった。僕は猫を撫でることに成功した。
写真はダメでしょうか? 撮りたきゃ撮ればいいよ。その代わり撮ったらすぐに立ち去ってくれ。承知いたしました。パシャリ。