夜明けが世界を染めるころ
「蝶の会で、何かありましたね」
真剣な表情で私を見つめるユウリ。
私も、そのままユウリを見返す。
正直全て言おうか悩んでしまう。
でも全て伝えてしまったら…後には戻れない。
巻き込んでいいのかわからない。
「何もないよ」
さらりと嘘をついた。
ユウリの顔に、ほんの一瞬だけ悲しそうな色が浮かんで、胸が少し痛む。
――色々あった。本当は聞いてほしい。
でもこの先は茨の道だ。巻き込んでいいの?
私だけじゃない、ユウリの人生をも変えてしまう。
ユウリから逃れるようにしゃがみ込み、散らばった書類を集め始める。
するとユウリも同じようにしゃがみ、拾った書類を差し出してくれた。
受け取ろうと手を伸ばした、その瞬間。
私の手を包むように、両手で握られる。
「私は、お嬢様のことを誰よりも知っているつもりです。
ずっとお世話をしてくれていたナタリーさんが退職されたとき――
お嬢様は、本当にいつも通りに過ごされていました。
それを見て、私は“意外とさっぱりしたお方なんだ”と思っていました」
ユウリは一度、言葉を切る。
「……でも、それは違いました。
頑張りすぎて倒れ、3日間も高熱にうなされて。
私は……お嬢様が目を覚まさないのではないかと、本気で心配したんです」
「そんなこともあったね」
そう言って、ユウリの手から逃れようとする。
けれど、握られた手は離してもらえなかった。
「お嬢様は、うなされながらこう言ったんです。
『わたし、ちゃんとできるから。もっと頑張るから。だから、見捨てないで』と」
胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
「それを聞いて思いました。
お嬢様は超人でも、何でもない。
ただ、頑張りすぎてしまう女の子なんだと。
誰にも頼らず、たった一人で必死に自分の存在価値を示そうとしているんだと」
ユウリの声が、少し震える。
「どうしてですか。私がいます。
私だけじゃない。お嬢様に心を動かされた人は、たくさんいます」
握る力が、わずかに強くなる。
「この家の使用人達はみんなお嬢様のことが好きです。
アリスも、騎士団のセナにテオ、弟のトワ様。
料理人のレオ、ブティック・グロウのルイさん。エマさんにサラさん。
……お嬢様の味方は、こんなにもいるんです」
「一人で、背負わないでください。私にそう言ったでしょ?」
泣きそうなユウリの声に、胸が締めつけられる。
「それでも……」
言葉を探す私に、ユウリはまっすぐ問いかけた。
「私を、信用できませんか?」
真剣な表情で私を見つめるユウリ。
私も、そのままユウリを見返す。
正直全て言おうか悩んでしまう。
でも全て伝えてしまったら…後には戻れない。
巻き込んでいいのかわからない。
「何もないよ」
さらりと嘘をついた。
ユウリの顔に、ほんの一瞬だけ悲しそうな色が浮かんで、胸が少し痛む。
――色々あった。本当は聞いてほしい。
でもこの先は茨の道だ。巻き込んでいいの?
私だけじゃない、ユウリの人生をも変えてしまう。
ユウリから逃れるようにしゃがみ込み、散らばった書類を集め始める。
するとユウリも同じようにしゃがみ、拾った書類を差し出してくれた。
受け取ろうと手を伸ばした、その瞬間。
私の手を包むように、両手で握られる。
「私は、お嬢様のことを誰よりも知っているつもりです。
ずっとお世話をしてくれていたナタリーさんが退職されたとき――
お嬢様は、本当にいつも通りに過ごされていました。
それを見て、私は“意外とさっぱりしたお方なんだ”と思っていました」
ユウリは一度、言葉を切る。
「……でも、それは違いました。
頑張りすぎて倒れ、3日間も高熱にうなされて。
私は……お嬢様が目を覚まさないのではないかと、本気で心配したんです」
「そんなこともあったね」
そう言って、ユウリの手から逃れようとする。
けれど、握られた手は離してもらえなかった。
「お嬢様は、うなされながらこう言ったんです。
『わたし、ちゃんとできるから。もっと頑張るから。だから、見捨てないで』と」
胸の奥が、きゅっと締めつけられる。
「それを聞いて思いました。
お嬢様は超人でも、何でもない。
ただ、頑張りすぎてしまう女の子なんだと。
誰にも頼らず、たった一人で必死に自分の存在価値を示そうとしているんだと」
ユウリの声が、少し震える。
「どうしてですか。私がいます。
私だけじゃない。お嬢様に心を動かされた人は、たくさんいます」
握る力が、わずかに強くなる。
「この家の使用人達はみんなお嬢様のことが好きです。
アリスも、騎士団のセナにテオ、弟のトワ様。
料理人のレオ、ブティック・グロウのルイさん。エマさんにサラさん。
……お嬢様の味方は、こんなにもいるんです」
「一人で、背負わないでください。私にそう言ったでしょ?」
泣きそうなユウリの声に、胸が締めつけられる。
「それでも……」
言葉を探す私に、ユウリはまっすぐ問いかけた。
「私を、信用できませんか?」