夜明けが世界を染めるころ
ユウリが、一歩前に出た。
「では――事実を確認いたしましょうか」
穏やかな声だった。
だがその一言で、場のざわめきは不思議と静まった。
「まず前提として」
手袋をはめた指で、静かに周囲を示す。
「ブローチが紛失したと騒ぎになったのは、つい先ほど。
その時点で、この場にいたのは――こちらの皆様です」
視線が、子どもたち一人ひとりをなぞる。
「トワ様は、先ほどまで私と書庫におりました。
戻ってこられたのは、騒ぎが起きた直後です」
周囲が、ざわりと息を呑んだ。
「つまり、盗難が起きたとされる時間帯、
トワ様がその場にいなかったことになります」
「……っ」
誰かが言葉を失う音がした。
ユウリは表情を変えないまま、続ける。
「次に――紛失したとされるブローチですが」
そう言って、掌の上にそれを示す。
「こちらで、お間違いありませんね?」
「な、なんで……!
どうして、あなたがそれを……!」
少年が声を荒らげる。
「確かに……確かに、ポケットに入れたはずなのに……!」
はっとして、少年は口を押さえた。
ユウリは静かに視線を向ける。
「挙動があまりにも不自然でしたので。
トワ様の衣服に忍ばせた直後、後ろから回収いたしました」
淡々とした声が、容赦なく事実を積み上げていく。
「ご自身のポケットに入れていた物を“盗まれた”と騒ぎ、
混乱に乗じて他者に罪を着せる――」
「幼いながら、よく考えた自作自演です」
「ち、違う……!」
少年の叫びが、空しく響く。
その瞬間。
場は、完全な静寂に包まれた。
ユウリは一度だけ視線を伏せ、淡々と告げる。
「――以上が、事実でございます」
そして最後に、静かにトワへと視線を向けた。
「疑いは、晴れました」
トワはしばらく、その場から動かなかった。
やがて――
そっと、私の袖を握る。
ほんのわずかな力。
「では――事実を確認いたしましょうか」
穏やかな声だった。
だがその一言で、場のざわめきは不思議と静まった。
「まず前提として」
手袋をはめた指で、静かに周囲を示す。
「ブローチが紛失したと騒ぎになったのは、つい先ほど。
その時点で、この場にいたのは――こちらの皆様です」
視線が、子どもたち一人ひとりをなぞる。
「トワ様は、先ほどまで私と書庫におりました。
戻ってこられたのは、騒ぎが起きた直後です」
周囲が、ざわりと息を呑んだ。
「つまり、盗難が起きたとされる時間帯、
トワ様がその場にいなかったことになります」
「……っ」
誰かが言葉を失う音がした。
ユウリは表情を変えないまま、続ける。
「次に――紛失したとされるブローチですが」
そう言って、掌の上にそれを示す。
「こちらで、お間違いありませんね?」
「な、なんで……!
どうして、あなたがそれを……!」
少年が声を荒らげる。
「確かに……確かに、ポケットに入れたはずなのに……!」
はっとして、少年は口を押さえた。
ユウリは静かに視線を向ける。
「挙動があまりにも不自然でしたので。
トワ様の衣服に忍ばせた直後、後ろから回収いたしました」
淡々とした声が、容赦なく事実を積み上げていく。
「ご自身のポケットに入れていた物を“盗まれた”と騒ぎ、
混乱に乗じて他者に罪を着せる――」
「幼いながら、よく考えた自作自演です」
「ち、違う……!」
少年の叫びが、空しく響く。
その瞬間。
場は、完全な静寂に包まれた。
ユウリは一度だけ視線を伏せ、淡々と告げる。
「――以上が、事実でございます」
そして最後に、静かにトワへと視線を向けた。
「疑いは、晴れました」
トワはしばらく、その場から動かなかった。
やがて――
そっと、私の袖を握る。
ほんのわずかな力。