夜明けが世界を染めるころ
――
孤児院でのボランティアが終わったあと、
レオとトワが今後のボランティアについての資料を持ってきた時のこと。
活動内容、必要物資、必要な支援金
どれも丁寧で、読みやすい。

「……すごい。とてもよくできてるわ」

思わずそう口にすると、レオがぱっと顔を輝かせた。

「ほんと!?
よかったー! トワがほとんどまとめてくれたんだけどさ!」

「いえ、レオが現場のことをたくさん教えてくれたので」

トワはそう言って、控えめに微笑む。

「この部分、特に助かるわ」

資料の一箇所を指す。

「孤児院側の負担まで考えてくれてる。
続けるには、とても大事な視点よ」

「えへへ……」

レオが照れたように頬をかく。

「続けたいですから。
一回きりじゃ、意味ない気がして」

その言葉に、胸が少しだけ温かくなった。

私は資料を閉じ、2人を見て微笑む。

「ありがとう。2人とも」

それから、少しだけ間を置いて。

「せっかくだから……」

自然と声が柔らいだ。

「何か、してほしいことはある?」

ほんの気軽な問いかけ。

すると、間を置かずに――

「遊びいきたい!!」

レオが、子どもみたいに勢いよく言った。

「……ぼ、僕も行きたいです」

少し遅れて、トワが控えめに手を挙げた。

けれど、その瞳は期待で輝いていた。

「俺湖がいいです!」

「僕はみんなでお弁当、食べたいです」

2人並んで言われて、
私は思わず笑ってしまったのを覚えている。


そして蝶の会以降、お見合いの話をしてからは父とはほとんど顔を合わせておらず、たまに、軽く挨拶を交わす程度だった。

今回、湖畔に行くことを告げると、驚くほどすんなりと承諾が返ってきた。

「少し、ゆっくりしてきなさい」

父にしては珍しい、労りの言葉だった。
その声には、普段の厳しさや距離感が影を潜め、ほんの少しだけ柔らかさが混じっていた。

心の奥で、私は小さく息を吐く。
こんな父の言葉に触れるのも、久しぶりのことだった。


――そんな記憶が思い出される。

今日は、休日。
それと合わせてナタリーさんにも会いに行く。

けれど――
この一日が、
また何かを動かしてしまう、そんな胸騒ぎもした。
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