夜明けが世界を染めるころ
王国騎士団に入隊するためには、
剣の腕だけでは足りない。

どれほど剣技に秀でていても、
どれほど学問に通じていても――
ある資質を持たぬ者は、騎士団の門をくぐることすら許されない。

それが、
魔宝石適性と呼ばれるものだ。

双輝アレキサンドライト王国では、
騎士の力は宝石――すなわち魔宝石によって支えられている。

入隊試験の最終段階で行われるのが、
《魔宝石適正判定》。

試験官の前に置かれるのは、
一切の色を持たない透明な魔法石。

それは、まだ何者にも染まっていない“空の器”。

受験者がその石に触れた瞬間、
魔力の質、精神の在り方、感情の傾向、意志の強度――
すべてが同時に測定される。

そして条件を満たした者のみ、
魔宝石はゆっくりと色を宿す。

蒼、紅、紫、翠、黄金、月白――
その者に最も適した宝石の輝き。

魔宝石が透明なものからその人自身の色に染まり、
それを武器に装着することで
“その者にしか扱えない武器”へと姿を変える。

この武器は、
単なる装備ではない。

魔力と精神に直結した――
魂の半身とも呼ばれる存在だ。

だからこそ、
この武器を扱うためには、厳格な条件と規定が設けられている。

第一に、
魔宝石武器は登録制である。

選抜された宝石は王国に記録され、
所有者以外が扱うことは原則として禁じられている。

第二に、
精神状態が著しく不安定な場合、
武器は応答しない。

恐怖、憎悪、執着――
それらが魔力を歪めたとき、
宝石は力を拒む。

第三に、
王国騎士以外が魔宝石武器を用いることは、
重罪に等しい。

それは力の暴走を防ぐためであり、
同時に――
宝石に宿る“星の記憶”を守るためでもあった。

星の記憶とは…この世界に存在する宝石すべてに宿る、
**“星が生まれ、砕け、巡ってきた時間の残響”**である。

第四に、

宝石に選ばれた者には、定期選定を受ける責務が課せられている。
これは新たな適性を測るためのものではなく、
既に宝石との状態を確認するための制度だ。

年に一度、
王国が定めた期間に必ず実施される。

内容は――
魔力量の測定、魔力の流れの安定性、
精神状態、感情の偏り、共鳴反応の変化など。

それらすべてを総合的に検査し、
記録として王国に保管される。

いわば、
魔宝石適性保持者に課せられた“健康診断”のようなものだった。


以上のことから騎士団では、こう言われている。

「剣を振るう者が騎士なのではない。
 宝石に選ばれた者が、騎士なのだ」と。

それでも。

どれほど優れた適性を示しても、
宝石は決して“王になれ”とは告げない。

あくまで示されるのは、
その者が何者であるかだけ。

――力の使い方を選ぶのは、常に人間だった。


この魔宝石適正判定が、
希望を与えると同時に――
多くの人の運命を残酷なまでに分けていくこともある。
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