夜明けが世界を染めるころ
全員が揃ったことを確認して、ディランが静かに口を開く。

外は真っ暗で、ランプの光が部屋を柔らかく照らす。
影が壁に揺れ、静寂に緊張感が漂う。

「作戦を始めようか」
ディランの声は低く、しかし明瞭だった。

「目標は……ガイルの野望の阻止だ。
彼は魔女の雫を魔女の紅血に変え、この世の中を掌握しようとしている。
そのための切り札として、ティアナの血と魂を狙っている」

言葉が部屋の空気を張り詰めさせる。

「だけど……」ディランは少し間を置く。
「魔女の雫を破壊したことで、蝶の会は壊滅した。
おまけに、オパール公爵家の不祥事により、ガイルはいま身動きが取れない状態だ」

その瞬間、レオが手を上げて口を開く。

「あのー……俺、詳しく知らないんですけど……
その宝石事件って、ガイルは何のためにやってたんですか?」

ディランは軽く頷く。
「そうだね。
宝石事件について知らない人もいるだろう。
順を追って話そう。

まず、魔女の雫という宝石はただの魔宝石じゃない。
人の感情――弱さ、憎悪、恐れ、絶望――を媒介にして力を増幅させる特別な宝石だ。
ガイルはそれを利用して紅血を作り、絶大な魔力を手に入れようとしていた。そして…」

私は静かに口を挟む。

「…私の存在…」

ディランの言葉が静かに響く。

「そうだ。ティアナ。
君の血と魂は、紅血を完成させる“鍵”になる可能性がある。
だからこそ、君の周りでガイルは事件を起こした。
君の力を確認するために……」

部屋の空気がさらに引き締まる。
ランプの光が揺れ、全員の視線が一点――ティアナ――に集まった。

「だから……エマも……」

ルイがそう告げると、胸に鋭い痛みが走る。
――私が原因だったのか。

気まずさに胸が重くなる。
だけど、そのルイはふっと肩の力を抜き、柔らかく笑った。

「お嬢様が気にすることじゃないわ。
そのガイルのせいなんだから」

明るく言うルイの声に、少しだけ心が軽くなる。

私はは深く息を吸い込み、拳をそっと握る。
「ありがとう……ルイ」

「さて、次はこの状況でどう動くかだ。
みんな、自分の役割を理解してほしい。」
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