夜明けが世界を染めるころ
ディランの隠れ家で過ごす、特訓の日々。
体も心も限界まで使い切るような毎日だった。

――真夜中。

どうしても眠れず、私は静かに部屋を出て階段を降りる。

……あれ?

薄暗いランプの下、ソファに腰掛けている人影があった。

「ディラン……?」

「やあ」

振り返った彼は、いつもの軽い笑みを浮かべる。

「眠れないのかい?」

「ええ……少し」

「なら、少し話さないかい」

「はい」

私は隣に腰を下ろす。
こうして並んで、何も考えずに話すのは――本当に久しぶりだった。

「こうやってゆっくり話すの、久々ですね」

「そうだね」

ディランは天井を見上げ、静かに息をつく。

「訓練づくしの日々だったからね」

少し間を置いて、彼は私を見る。
静かな夜の中で、ぽつりと言った。

「俺はさ……ティアナ、君のことが、好きみたいだ」

「……は?」

思わず、間の抜けた声が出る。

ディランは視線を逸らさない。

「冗談抜きで、だよ」

「それは……また、急ですね」

私がそう返すと、彼は小さく笑った。

「だからこそ、君のことを知りたい」

その声は穏やかで、真剣だった。

「君が、どんなものを見て、
どんなことを思いながら、これまで過ごしてきたのか」

私は少し視線を落とす。

「……そんなに、面白いものではないです」

「それでも、だよ」

即答だった。

「君の話なら、なんでも興味がある」

ふと顔を上げると、彼の視線がまっすぐ私を捉えていた。

「……随分と、真っ直ぐに見るようになりましたね」

そう言うと、ディランは少し困ったように、でも真面目に言う。

「君が言ったんだろう?
まどろっこしい、って」

一瞬の沈黙。

「だから、君とは――
真っ直ぐ向き合う努力をしてる」

胸の奥が、静かに揺れた。

「……そうですか」

それだけ答えると、ディランは穏やかに笑う。
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