夜明けが世界を染めるころ
「君によく似合っているよ」

「ありがとうございます」

夕陽に照らされて指輪が柔らかく輝く中、ディランはすっと跪いた。

「何事ですか?」

「プロポーズをちゃんとね?」
イタズラっぽく笑う。
「ほら、婚約発表するのにもそういうネタは必要だろ?」

「ネタとかいうんじゃない」
私は思わず顔をしかめるが、胸の奥は少し高鳴る。

ディランは深く息をつき、
真剣な表情で、私の手を取った。

その温もりだけで、
胸の奥が静かに引き締まる。

「私、ディラン・アレキサンドライトは、
ティアナ・ラピスラズリに、この指輪を捧げます」

指輪が、夕暮れの光を受けて淡く輝く。

「貴女と、
私たちの大切な人たちが、
明るい未来を歩めるよう――誓おう」

そう言って、
彼はその指輪に、軽く口づけた。

「……相変わらず、様になりますね」

思わず漏れた言葉に、
殿下はわずかに口角を上げる。

「褒め言葉として、受け取っておこう」

夕暮れの光が、
私たち2人を包み込む。

街のざわめきは遠く、
今この瞬間、
世界には私たちしかいないようだった。

「さて……」

殿下が、やさしく促す。

「君の返事も、聞かせてくれるかい?」

……少し、悩む。

返事。
簡単に口にしていい言葉ではない。
まだ、自分の心の整理がついていないのも事実だ。

けれど――
迷いの先にあるものだけは、はっきりしていた。

「では……」

私は、顔を上げる。

「ティアナ・ラピスラズリは、
ディラン・アレキサンドライトと共に、
血反吐を吐いてでも、戦いましょう」

一瞬の沈黙。

「……なんだか、物騒だな」

殿下が、苦笑する。

「そうですね」

私も、少しだけ笑った。

「でも……今の私には、
これが一番、正直な言葉ですから」

夕暮れの空が、ゆっくりと夜へ溶けていく。
オレンジと紫が混ざり合うその色は、まるで指輪のアレキサンドライトそのものだった。

完璧な誓いではない。
甘い言葉でもない。

それでも――
確かに、ここにある。

並んで進む覚悟だけは、
もう、ちゃんとある。

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