夜明けが世界を染めるころ
「……勘違いしないでね」
マリアンヌは、紅茶のカップを置きながら言った。
「私は、貴女のことを気に入らないの」
「はい。存じております」
即答すると、彼女はわずかに目を細めた。
「でもそれは――」
「マルクが、貴女と自分を比べて傷ついていたからよ」
胸の奥が、静かに痛む。
「……そうですね」
マリアンヌは小さく息を吐いた。
「私が甘やかしすぎたのね。
あの子の弱さも、不安も……全部」
視線を伏せ、そしてきっぱりと顔を上げる。
「だから、これからはビシバシしごいていくことにするわ」
「……はい」
思わず苦笑いをする。
「覚悟なさい。逃がさないわよ」
その言葉には、冗談めいた響きと同時に、
確かな“母の覚悟”があった。
マルク がんばれ。
しばし沈黙が落ちる。
やがて――
「ねぇ、ティアナ」
初めて、名を呼ばれた。
私は思わず顔を上げる。
「マルクを、引っ張ってくれてありがとう」
一瞬、言葉を失った。
「……いえ。私は、何もしていません」
本心だった。
「むしろ……庇ってくださったことの方が、驚きでした」
あのとき、
剣を構え、迷いなく前に立った背中。
「彼が行動を起こしてくれたからこそ、
私は今、ここにいます」
マリアンヌは静かに聞き、
それから、ふっと微笑んだ。
「そう。」
午後の光が、彼女の髪をやわらかく照らす。
厳しく、誇り高く、
けれど確かに“母”の顔だった。
私は胸の奥で、小さく息を吐いた。
ここにいることを、
ようやく許された気がした。
マリアンヌは、紅茶のカップを置きながら言った。
「私は、貴女のことを気に入らないの」
「はい。存じております」
即答すると、彼女はわずかに目を細めた。
「でもそれは――」
「マルクが、貴女と自分を比べて傷ついていたからよ」
胸の奥が、静かに痛む。
「……そうですね」
マリアンヌは小さく息を吐いた。
「私が甘やかしすぎたのね。
あの子の弱さも、不安も……全部」
視線を伏せ、そしてきっぱりと顔を上げる。
「だから、これからはビシバシしごいていくことにするわ」
「……はい」
思わず苦笑いをする。
「覚悟なさい。逃がさないわよ」
その言葉には、冗談めいた響きと同時に、
確かな“母の覚悟”があった。
マルク がんばれ。
しばし沈黙が落ちる。
やがて――
「ねぇ、ティアナ」
初めて、名を呼ばれた。
私は思わず顔を上げる。
「マルクを、引っ張ってくれてありがとう」
一瞬、言葉を失った。
「……いえ。私は、何もしていません」
本心だった。
「むしろ……庇ってくださったことの方が、驚きでした」
あのとき、
剣を構え、迷いなく前に立った背中。
「彼が行動を起こしてくれたからこそ、
私は今、ここにいます」
マリアンヌは静かに聞き、
それから、ふっと微笑んだ。
「そう。」
午後の光が、彼女の髪をやわらかく照らす。
厳しく、誇り高く、
けれど確かに“母”の顔だった。
私は胸の奥で、小さく息を吐いた。
ここにいることを、
ようやく許された気がした。