余命2ヵ月のわたしを愛した死神

わたしは見上げてくる美雨を抱っこしながら、目の前に居る雨城さんに一歩ずつ歩み寄る。
それと同時に雨城さんもこちらへ歩み寄って来て、それから雨城さんはわたしを美雨ごと抱き締めてくれた。

「ずっと、会いたかったです。」
「それはわたしもですよ···、突然居なくなっちゃうから······」
「申し訳ありません。」

そう言って一度身体を離したわたしたちは、お互いの存在を確かめるように見つめ合う。

今、雨城さんがわたしの目の前に居る···――――
これは夢ではないだろうかと、信じられない気持ちだったが、わたしの頬を流れる涙を拭ってくれる雨城さんの手の温もりに、わたしは(夢じゃない······)と確信が持てた。

「戻って来るのに、5年もかかってしまいました。」
「でも、戻って来られたんですね。」
「はい、色々ありましたが何とか···。でも、戻って来るにあたって、以前と同じ名前は使えなかったので、"雨城"の"雨"を"天(てん)"に換えて、天城(あまき)として戻って来ました。」

雨城さん、改め、天城さんはそう言うと、わたしが抱き上げている美雨に視線を移した。

「可愛いですね。」
「天城さんの娘ですよ。名前は美雨です。美しい雨と書いて、美雨です。」
「美雨ちゃん、可愛い名前だ。」

天城さんは優しい瞳で美雨を見つめ「こんにちは。」と美雨に話し掛けた。
美雨はそんな天城さんに「こんにちは!」と元気良く挨拶をして、天城さんによく似た笑顔で微笑みかけていた。

「天城さんにそっくりでしょ?」
「似てますかね?」
「笑った時の顔がそっくりですよ。」

そんな会話を交わし、わたしが美雨に天城さんを紹介しようとした、その時だった。

「美雨の、パパ?」

美雨の口から出て来たその言葉に、わたしは驚き、天城さんとわたしは顔を見合わせた。

「パパだって分かるの?」

わたしがそう訊くと、美雨は笑顔を浮かべながら「うん!わかるよ!」と返事をし、それから美雨は天城さんに抱っこを求めるように手を広げた。

天城さんはそんな美雨の姿に嬉しそうに微笑みを浮かべると、軽々と美雨を抱き上げた。

わたしの目の前に娘を抱き上げる天城さんの姿がある···――――
それはわたしがずっと見たかった光景だった。

その光景に感動し、わたしは再び涙を流す。

すると、泣いてばかりいるわたしを見た美雨が「ママも!おいで!」と言い、わたしは手を伸ばして天城さんと美雨の中に入って行き、わたしたちは家族3人で抱き合った。

ずっとずっと、訪れるかどうかも分からずに待ち望んでいた今。
わたしはその喜びと幸せをグッと噛み締めた。

そして、天城さんはわたしの耳元で優しくこう囁いた。

「雫さん、遅くなりましたが···ただいま帰りました。」



―END ―

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