ベッドの隣は、昨日と違う人
独白 〜 あゆみside 〜







一個上の彼氏、拓也。
……いや、もはや仮氏かな。

結婚は?
いつごろどうする?

そんなことを、拓也に聞いていた時期もあった。
本気だった、と思う。たぶん。

でも正直、今のわたしにとって拓也は、
“あの人”がダメになった時の安全ネット。

ねえ。
わたしが何も知らないと思ってる?

マチアプやってること。
平日の夜、別の女とホテルに行ってること。
しかも、ひとりじゃないこと。

全部、知ってる。

土日は「彼女と過ごすもの」だと思ってるのか、
一応一緒にいるけど。

でもね、
わたしの“あの人”は、土日が仕事。

だから、拓也の平日は、わたしの土日。
わたしも平日に会う。

“あの人”に出会ってから、
拓也なんてどうでもよくなるくらい、好き。
大好きなの。

……でも、“あの人”は既婚者。

それでもね、
わたしのことが一番好きだって言ってくれる。
もう少しで離婚するって、言ってくれてる。

だから、それまで。

その時が来たら、
拓也は切ればいい。
仮氏は、仮氏のまま。






今日は、拓也の先輩の二次会。
同伴が必要らしい。

正直、めんどくさい。

でも、拓也は
「彼女がいる俺」を演出したいんでしょ。
わたしの役割って、それ。

ビュッフェのところで、拓也が女と話していた。

……あ。
この人、拓也の浮気相手だ。

女の勘。
わかるよ。
拓也が嘘つくときの、あの目。

「拓也の彼女です♡」

わざと腕に触れて、
満面の笑みで言ってやった。

その女、
どうやら別の男と来てたみたいで。

拓也、
わかりやすく傷ついた顔してた。

なに?
適当に扱ってたくせに、
誰かのものだって知ったら惜しくなるわけ?

……ほんと、都合いい。






帰り道、
わたしは明るく言った。

「拓也ー!今日この後どうする?
……うち、来る?」

今夜は寝かせない、なんて。
あの女のことでイラついてるから、
そう言うんでしょ。

わたしを、代わりにするつもり?

……まあ、
わたしも今夜は、
あんたを“あの人”の代わりにするけど。

頭の中ではね。






家に着いてすぐ、スマホが震えた。

📱
「あゆみちゃん、今度はいつ会える?」

来た。
――“あの人”から。

拓也は、普段そんなこと聞いてこないくせに、
今日は「誰から?」なんて聞いてきた。

……何か感じたのかな?

そんなわけないか。
拓也だし。

「お母さん」

そう答えたら、
コーヒー淹れて、とだけ言い残して、
興味なさそうにシャワーを浴びに行った。

拓也が去ったあと、
わたしはすぐに返信する。

拓也には絶対に使わない、
ハートマークをつけて。

📱
「今週、平日ならお泊まりOKだよ🩷」

あぁ、楽しみ。
早く、“あの人”に会いたい。

その時が来たら、
拓也のことなんて、思い出しもしない。

仮の彼氏は、
仮のまま終わる。

それでいい。

だってわたしは、
ちゃんと欲しい人を選んでるだけ。

今も、これからも。

……あーぁ。
早く、“あの人”と結婚したいなぁ♡





キュ……

浴室の奥で、
シャワーを止める音がした。

拓也が、もうすぐ上がってくる。

わたしは何も考えずに、
コーヒーをマグカップに注いだ。





       ~あゆみside~
          終


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