鈍感な私は愛されヒロインです!?

気づいてるのは、私以外

 目覚ましの音で目を覚ます。
 カーテンの隙間から入ってくる光は、昨日より少しだけ強い気がした。

 身支度をしながら、なぜか昨日の放課後を思い出しかけて、首を振る。
 並んで歩いただけ。会話もほとんどなかった。
 ただの帰り道だ。

 学校に着くと、いつも通りの朝が始まる。
 廊下は騒がしくて、教室のドアを開けた瞬間、空気が一気に動いた。

「おはよー、ひより」

 瀬名くんが先に声をかけてくる。

「おはよう」

 返しただけなのに、なぜか瀬名くんがにやっと笑った。

「……なに?」

「いや? 別に?」

 絶対、別にじゃない。
 そう思いながら席に向かうと、黒崎くんが椅子を後ろに倒したまま、ちらっとこっちを見る。

「……」

「……?」

 目が合った気がしたけど、すぐに逸らされた。
 朝からなんなんだろう。

 席に座ると、前の方にいる月城くんの背中が目に入る。 
 ノートを広げて、もう授業の準備をしているみたいだった。

 その背中を見た瞬間、胸の奥が少しだけざわつく。

 ……だから、なんで?

 理由が分からなくて、私は視線を落とした。

 休み時間になると、さらに意味が分からなくなる。
 瀬名くんはやたら距離が近いし、黒崎くんは短い言葉で会話を切り上げる。
 月城くんは、いつもより静かだ。
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