君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 思考が一拍遅れて、その言葉の意味を噛み砕いた。

「……は?」

 喉の奥から、乾いた笑いのような音が漏れた。スマホを握る手に、じわりと力が入る。
 ディスプレイは、晴菜の拒絶を冷徹に映し続けていた。心臓の鼓動が耳元で鳴り響き、部屋の空気が一気に重くなった。
 自分が身を引けば――すべて丸く収まる。晴菜は、そう判断したのだろう。
 そう理解した瞬間、原始的な衝動が腹の底からせり上がってきた。

「俺の人生から、……勝手に降りようとしてんじゃねぇよ……!」

 奏汰はぐっと唇を噛み、通話ボタンに指をかけた。が、寸でのところで思いとどまった。
 電話で済ませる話ではない。
 けれど、今ここで動かなければ――取り返しがつかない。
 忙しさにかまけて、きちんと話す時間を取らなかった。「大丈夫だ」と言葉にして、安心させることを怠った。

 ――しくじった。

 スマホを握りしめる指先が、怒りと後悔で微かに震えた。麗奈の傲慢さや兄の沈黙、そんな外野のノイズなどどうでもよかった。
 一番は、晴菜の隣にいるべき自分が、彼女の不安に寄り添えていなかったことだ。
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