【完】君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
「世間への分かりやすさですわ」
麗奈は即答した。その顔には、この場の主導権を握った者の余裕が浮かんでいる。
「家と家が結ぶ。これ以上に強いメッセージはない。富裕層は『物語』に金を払います。氷室と高坂の血統、時東の流通。それを一つに束ねるのが婚約という形です」
「物語の代償が当事者の人生なら、安いとは言えない」
稔が淡々と、けれど重みのある言葉を差し挟んだ。
「稔は慎重すぎますのよ」
麗奈の声に、明確な棘が混じる。彼女の優雅な仮面の下で、苛立ちが少しずつ熱を帯び始めているのが分かった。
隆之が重苦しく息を吐き、卓を指先でトンと叩いた。部屋を流れる沈黙が、さらに濃度を増していく。麗奈はそんな空気など気にも留めない様子で、再び奏汰へと視線を向けた。
「富裕層の棚に並ぶには、装いも必要。奏汰、あなたは分かっているはずでしょう。都内で営業先を回ったのなら。彼らが何を求め、何に跪くのかを」
「分かっていますよ。棚に並ぶには『演出』がいる。その商品が商品であるためのストーリーも、価格も。……だが」
奏汰はゆっくりと顔を上げた。その瞳には、今までにない鋭い光が宿っている。
「それは酒を良く見せるための装いであって、酒を別物にすることではありません」
「別物にするつもりはありませんわ。あなた方は造り手としては一流。でも、売り方は素人に近い」
麗奈は即答した。その顔には、この場の主導権を握った者の余裕が浮かんでいる。
「家と家が結ぶ。これ以上に強いメッセージはない。富裕層は『物語』に金を払います。氷室と高坂の血統、時東の流通。それを一つに束ねるのが婚約という形です」
「物語の代償が当事者の人生なら、安いとは言えない」
稔が淡々と、けれど重みのある言葉を差し挟んだ。
「稔は慎重すぎますのよ」
麗奈の声に、明確な棘が混じる。彼女の優雅な仮面の下で、苛立ちが少しずつ熱を帯び始めているのが分かった。
隆之が重苦しく息を吐き、卓を指先でトンと叩いた。部屋を流れる沈黙が、さらに濃度を増していく。麗奈はそんな空気など気にも留めない様子で、再び奏汰へと視線を向けた。
「富裕層の棚に並ぶには、装いも必要。奏汰、あなたは分かっているはずでしょう。都内で営業先を回ったのなら。彼らが何を求め、何に跪くのかを」
「分かっていますよ。棚に並ぶには『演出』がいる。その商品が商品であるためのストーリーも、価格も。……だが」
奏汰はゆっくりと顔を上げた。その瞳には、今までにない鋭い光が宿っている。
「それは酒を良く見せるための装いであって、酒を別物にすることではありません」
「別物にするつもりはありませんわ。あなた方は造り手としては一流。でも、売り方は素人に近い」