【完】君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
「売り方を学ぶことと、主導権を渡すことは違う」

 麗奈の言葉を遮るように、稔が静かに口を開いた。

「時東が販促を担えば、価格帯も出荷量も、最終的な判断は時東の意向が強くなる。そうなれば、造り手の裁量は確実に狭まる。それは氷室や高坂の魂を売るのと同義だ」
「稔、それは極端すぎます」

 麗奈の完璧だった笑みがわずかに硬くなる。

「主導権を奪うなどと言っていません。共同で決めると言っているのです」
「共同、という言葉ほど曖昧なものはない」

 ここで初めて隆之が強く口を挟んだ。双方の板挟みになりながらも、経営者としての危機感が彼を動かしたようだった。

「その曖昧さが問題であれば、はじめから全体を契約で詰めればいい話でしょう。重要なのは機を逃さないこと。今、インバウンド市場は和のラグジュアリーに傾いています。三年後では遅いのです」
「その市場が三年持つ保証は?」

 奏汰が突き放すように低く問う。

「ブームは波だ。タピオカミルクティーがいい例です。感染症の影響もあったが九割が店を閉めた。今は右肩上がりでも下りは必ず来ます」
「だからこそ『家同士』を結ぶのですわ」

 麗奈はきっぱりと言い切った。

「時東、氷室、高坂のつながりが一過性ではない。その象徴が婚約です」
「象徴にするには、当事者の合意が足りません」

 穂乃果が静かに、だがはっきりと言葉を紡ぐ。
< 147 / 174 >

この作品をシェア

pagetop