自殺撲滅隊!
 はぁっ…今日も塾…
 詰まらない。別にそんな訳じゃないけど
 少しぐらい休ませろってな。
 ま、今更なんだって話。

 家庭も荒れてきて、塾も嫌。
 皆同じだって知ってるけど、俺だけって思ってしまう。そんな世界に住んでる自分が嫌いだから、いっそのこと死んでしまおうと思った。
 どうやって死のうか
 何て考えているうちに学校で友達がルーレットで遊んでいたのを思い出した。
 ん、そうだルーレットで決めよう。
 それが一番楽だ。
「ん…パソコンパソコン…どこだ…ん…ぁ、あった」
 死に方の候補は考えてある。溺死に落下死に包丁を刺して出血性ショック死、あとはオーバードーズ。
 どんどん出てくる死ぬ方法。
 もう、俺にしかこの方法しかないのかと考えるとつくづく自分が虚しくなる。
「回す…かな」
 ルーレットが『溺死』そう書いてあるホイールに止まった。
「溺死か…」
 風呂で溺死なんか、勿体ないし、格好悪い。
 海が一番いい。
 海へ行こう。
「ちょっと…?慧、斗?」
 扉へ目を向けると、目を大きく開けた母さんが立っていた。
 足は震えていて、いまにも倒れてしまいそうだ。視線はパソコンの画面へと一直線へ向かっている。
 バレた。
 こんなんじゃ止められる。
 嫌だ。
 何としてでも死ぬ。
 今日死ぬって、今日、絶対に死ぬって、決めた。
「なにそれ…私の何が悪かったの?何がいけなかったの?」
 母さんは子供のように泣き出した。
 母さんは何も苦労してないはずなのに。
 金を払ってるだけなのに。
 憎しみが沸き上がってきた。

 でも、そんな思いとは裏腹に口に出た言葉は全然違った。
「ごめん。あの、これは、ただ、遊びでやっただけ。全然本気じゃないよ。」
 少しの沈黙。
「そう……」
 返事に困る。
 母さんは俺の部屋にうずくまって出ようとはしないし、この状態で変に動いたら怪しまれるだろう。
 きっと止められる。
 必死に言い訳を考える。
「ぁ、あの…さ……友達の家、行っていい?」
 こんなんじゃ怪しまれる。
 無理だ。
 そう思ったら意外な返事が返ってきた。
「七時半の塾までには、絶対に、帰ってきなさい」
 まったく馬鹿な母親だ…
 こんな母親のもとに生まれてきたから、こんな変な人生だったんだ。友達の家行くふりして死ぬかもしれないっていう考えはなかったのだろうか。
 でも、これで海へ行ける。

 死ねる。

「行ってきます…」
 ガチャンとしまった扉を背に空を見上げると、自分でも驚くほど弱弱しい「行ってきます」が口から出た。そんな「行ってきます」とかぶせるように
(さようなら)
 と、心の中でつぶやく。


 暗いし誰かに見つからないように死ねる。そう、自分に言い聞かせて海へと向かった。



 黒く波打つ海を覗く。
 黒く、底の見えない冬の海は、とても怖いものだった。
 勇気を出して飛び込もう。そう思った。
 片足を海に触れさせる。
 冷たい。
 都合が良い。
 冷たければそれだけ早く死ねる。
 嫌な思い出がなくなる。
 両足を入れる。
 さぁ、飛び込もう。
「ちょっと君、こんな夜に危ないぞ」
 後ろを振り向くと、作業服を着たおじさんが立っていた。
 見つかった。
 早く入ろう。早く逃げよう。
(あれ…)
 身体が動かない。

「危ない!!!」
 おじさんの叫び声が聞こえた。俺を追いかけてきたおじさんが勢いを余って俺にぶつかる。
 お前も落ちるぞ。死ぬぞ。
 そう思った瞬間だった。


 俺は海に落ちた。おじさんはどうなったかは知らない。
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