【完結&番外編追加中】三十路の社畜OLが出会った翌日に八才年下男子と結婚した件につきまして
眩暈だった。
眩暈は割とよくある。
耳石が剥がれやすい体質だからだ。
だから別に特別なことでもなかった。

ただ──

勇凛くんが私に覆い被さっている。

「すみません!大丈夫ですか?」

勇凛くんが顔を上げた時、目が合った。

見つめ合ったまま、時計の秒針の音だけが聞こえる。

心臓が早く脈打つ。

その時自然に私たちの唇が重なった。

あの時は一瞬だった。

今度は、10秒くらい。

そのあと、私も勇凛くんもお互いの顔が見られなかった。

「……眩暈は割とよくあるんだ。驚かせてごめんね」

「そうなんですね……俺今日も泊まりますよ」

「ううん。大丈夫。明日学校あるんだから、今日は帰って」

私が促すと、「わかりました」と渋々了承してくれた。

勇凛くんは立ち上がって、私に手を差し伸べてくれた。

「帰ります」

「うん」

ぎこちなく話す私たち。

私は勇凛くんを見送ったあと。

部屋のフローリングにへたりこんだ。

「こんなんじゃ心臓がもたない……」

その時、スマホに着信があった。

姉からだった。

「もしもし」

『退院した?』

「うん、退院したよ」

『あの男の子とはどうなったの?』

「うん……。これから夫婦として二人でやっていくつもりだよ」

『そうか〜。おめでとう!式は?』

「まだ何も考えてないよ」

『まあ急がなくていいからねー。ところでさー、あんた、その子の扶養とか社会保険関係ちゃんとやってる?』

「え?」

何も考えていなかった。
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