だからアナタに殺されたい。
タブレットとは、様々な動物の血を凝縮し作られた錠剤だ。これさえ1日1回飲んでいれば、吸血鬼はその本能を抑えられる。その結果、禁断症状も起こらない。
私たちはただタブレットが必要な人間のようなものなのだ。
だから血を流す誰かを見ても、みんなが信じる吸血鬼のように、本能が暴れ出すこともない。
何も感じない。
むしろあんなものを口に含みたいという考えそのものが、私には理解できなかった。
そして私のような考え方は吸血鬼の中でもごく一般的なものだった。
その為、普通に生きていれば、誰かの血を口にした吸血鬼の話など、耳にすることさえもなかった。
そもそも本能に身を任せ誰かの血を吸う行為は、バケモノに堕ちることと同じだ。
そう幼い頃から何度も聞かされてきたし、私自身もそうだと思っている。
『俺がアナタを守ります。いつまでも』
ふと、そんな私の思考の隙間に、今日のローゼルの姿が入ってくる。
ほんの少しだけ瞳を細めて、柔らかく笑うローゼル。
恩人へ向けるその言葉に他意はない。
それでも私の心臓を何度も何度も高鳴らせた。
「…はぁ」
パタンッとノートを閉めて、ペンを持ったまま、机へと伏せる。
好き、好き、好き。
どうしても、溢れて止まらない。
以前まではこんな感覚なかったというのに。
私はまぶたをゆっくりと閉じた。
そして、彼に恋慕を抱く前、彼との出会いから現在までに続く記憶に思いを馳せ始めた。