だからアナタに殺されたい。



「アナタには関係ない」



冷たい声音に、胸がざわめく。
否定しないということは、肯定してることと同義だ。

ローゼルの腕にあった、黒いシミ。
あれは全身を痺れさせ、自由を奪うマリカという毒の後遺症としてできるものだ。
自分でマリカをあおったとは思えない。
誰かに飲まされたとしか…。



「もういいですか」



止まってしまった私の手に、怪訝そうな声がかけられる。



「ま、待って!最後に包帯を…!」



ローゼルの声に、私はとりあえず考えることをやめ、慌てて医療箱から包帯を取り出し、それを巻き始めた。

よく見ればローゼルの騎士服は第一騎士団所属だというのに、古びており、小さな破損がある。
第一騎士団は騎士団の中でも花形で、エリート集団だ。
そのほとんどが高貴な血を受け継ぐ貴族で構成されており、貴族以外では、圧倒的な実力や成果をあげた者がそこに加わっている。
彼らの仕事は皇帝陛下や皇族の護衛、舞踏会などたくさんの貴族が集まる場の警護などだ。

そんな第一騎士団所属のローゼルの現状に、私は小さな違和感を覚えた。

よく見ると完璧ではない騎士服に毒の後遺症。
彼には何かあるのではないか。

包帯を巻き終え、慣れた調子で結ぶと、私は顔をあげ、まっすぐとローゼルを見た。



「…何か困っていることとかない?まだここに来て半年でしょう?」

「ありませんが」



私の問いかけに、ローゼルが冷たくそう言い放つ。
それから淡々と「ありがとうございました」と言うと、さっさと救護室を後にした。

扉の向こうに消えていったローゼルの背中に、私の胸の内は静かにざわめき続けた。


< 9 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop