『女神の加護を 受けし者は世界を救う』
③転:聖女不在
ライオネル様から召喚を否定され、それでも希望を捨てずに聖女様を待ち望む。
この世界を救うのは、私ではないから。
未来を知る誰かがいるから。
もしかすると聖女様は、もうこの世界に来ているのでは。
その可能性もある。
予告された魔王復活。それに備え、教育されてきた聖女見習い。
そこから厳選された聖女候補。
私はその中にいた。
けれど、聖女様の邪魔にならないようにしなければ。
自分に出来る限り支えとなれることがあるなら。
学園の入学式。
制服に身を包み、そこでの2年をどう過ごすのか。
気持ち新たにして。待ち望んだ聖女様。そこに姿はなく。噂もなく。
それでも回避された最悪の未来は事実で。
聖女様がいない。
そして目に入ったのは。過去で婚約者だった王子ユーリス。婚約者不在。
側近の騎士フリックと、何故か学園に通うことになった勇者ジークハルト。
未来が変わった。
勇者は学園にいなかった。
見つかったのは2年前。その間に何か違いが。
分からない。
ほぼ神殿で生活し、週一の帰省で町に出、時に長期の休みで領地を巡ることがあったけれど。
もちろん聖女様の情報が得られないかと、情報屋など手を尽くしてきた。
何が起きているのか。
未来は良い方向に変わったのだから、それは良い事。
誰も不幸にはなっていない。それこそ女神レイラリュシエンヌ様の加護。
召喚のない世界。
これは、どこから変えられてしまったのか。
では、誰が未来回避しているのか。
「ユーリス様、この学園では身分の差もなく話しかけても良いと聞いて。これ、食べてください!」
勇気のある人もいるんだな、そう声の大きさに思わず目を向けた。
そこにいたのは、料理レシピを国民に流布しているという女生徒ユニアミ。
そう、過去にお母様が病で亡くなるのを回避した。
病に効果のある薬草を使った料理のレシピを作った人。
「あぁ、君はユミアミだね。ありがとう。立場は学生として同じなんだけど、どうしても毒見は必要なんだ。それでもいいなら、頂くよ。」
「もちろんです!私が入れなくても、誰が悪意を持っているかも分かりませんから。一口でも、食べた感想を下さい。」
私も帰省した際には、彼女のレシピを使用した専属の菓子店から買ったケーキやクッキーを食べた。
とても甘く、美味しかった。
悪意などないだろう。
薬草を使った料理も苦みなく、安価で誰もが食せるように配慮されたと伝え聞いた。
彼女が聖女なのだろうか。