『女神の加護を 受けし者は世界を救う』

お母さんが呼んだギルドの人や、神殿の人達が森の捜索をする。
まだ前世の記憶が戻ったばかり。魔法も使えず。父を喪った。
もう誰も死なせたくない。
この世界に生まれ、この世界で生きていくから。

原因不明の火災。
冒険者の不始末だろうと結論が出た。
誰が水魔法で鎮火したのか、それも不明。
父は冒険者の登録をしていた。
ギルドの依頼があれば、受けると昼から出かけ。
何日かいない時もあった。
居る日の朝は、母の調剤に使う薬草を採るのが日課だった。
その日課を兄と私ですることになる。

お兄ちゃんは優しくて、魔法が使えた。
教えて欲しいと言ったけれど、私には使わないで欲しいと頼まれた。
使えるとしても。
兄が見ていた未来がなんだったのか分からない。
ゲームをしてシナリオを知っている。チートだってできる。
聖女にもなれる。そう夢見た主人公に。
前世の記憶に、焦りのようなものがあった。
けれど、この世界で生きる私は。

冒険者だった父親は死んだ。
生活は苦しくなる。
今までの蓄えでは、兄の魔法学園の進学を左右するほどに。
これが現実。
この歳では冒険者登録するにも後見人が必要。
冷静になる。
これはゲームじゃない。
私が聖女にならなくても、誰かがこの世界を救う。
けれど、王子様とか騎士と仲良くなりたい。
それは可能だろう。

父が亡くなって数日。
兄の進学をどうするかの話が出て、お兄ちゃんはお金が工面できないなら冒険者になると言った。
まだ前世の記憶を役立てる事も出来ない私には、どうすることも出来ず。
家族の話し合いの場で、私は黙ったままだった。
朝に、お母さんから頼まれた薬草を探して集め、家に戻って朝食を食べる。
昼までの間、私は母の調剤を手伝った。
そして合間に関連する本を読む事にした。
お母さんは、私の質問に対して丁寧に教えてくれる。
私には見つけたい薬草があった。
その情報を見つけなければ、この世界を“私が”救う事はできない。
それは私だけ。この環境だからこそ。
この世界に生まれ育った故。この両親の元に生まれてきたから。
誰かを救う。
出来るなら、お兄ちゃんには学園で学んで欲しい。
家族を救うのは私。


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