『女神の加護を 受けし者は世界を救う』
第一章:召喚 真木野 理世(まきの りせ)

①起:出会い


どこか浮遊するような、目が回るような違和感。
意識の朦朧とする中、目を開いて見えたのは白いシーツ。
私は寝ていたようだけど。
自分の部屋でも家でもない。
病院?ではないよね、薬品の匂いがしない。
体に痛みはない。
学校の保健室で、このシーツの管理や維持は無理よね。
手触りの良い……
そこで意識がはっきりと。
身を起こして、周りを見渡す。
まるでお城の中の一室。
日本家屋にはない広さと、大きな窓に高級な家具。
ベッドもシングルではない大きさ。
ここはどこ?
まさかこれが。異世界転生?
洋風だから、外国の過去の可能性も。
転移?どこに。何故。

最後の記憶は、両親と弟妹が珍しく揃った夕食。
部屋でいつものように眠った。
これは夢?
両頬を勢いよく手で挟むように叩く。
衝撃音が耳に響き、頬は痛みが生じて熱を発した。
「痛い。」
その音が発端なのか、ドアにノック音。
「失礼します。」
相手の言葉が分かる。
けれど入ってきたのは、異国の外見をした女性。
色白く、髪色は茶色で目は青い。
きっと個人差はあるのだろうけど。
「リセ様、お目覚めになって驚いていると思いますが。王がお待ちです。準備をお手伝い致しますので。」
王。いきなりだな。
言葉が所々、違和感があるのは翻訳の関係か何かだろうか。
理解できるように、私の語彙力に合わせているのかもしれない?
それにしても何故、私の名前を知っているのだろうか。
ベッドを降り、自分がパジャマ姿なのを確認し、やはり一日を終えて普通に寝た後のことなのだと思う。
痛みはあった。夢ではない。
疑問は頭一杯。

私の身の回りを忙しく動き回っている彼女に、手足を止めてもらうこともできず。
自分一人では着られない形のドレス。
こんな体験、二度と出来ないだろうな。
手触り良く、レースが幾重にも縫製されて。
髪を結い、顔にほんのり化粧をされて。
香水なのか上品な香り。
特別な何者かになったような気分にさせる。

身支度を終え、案内されるまま歩き。
王って言っていたから、お城なんだろうな。
長い廊下に塵一つなく。
外からの光。
太陽みたいなのがあるんだよね?
寝るベッドがあるってことは夜があって、睡眠をとるわけで。


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