『女神の加護を 受けし者は世界を救う』
異世界?
ラノベとかでは違和感ないけれど、何故、同じ環境なんだろうか。
獣人の表現はあるけれど、人型。
会話して。基本的な衣食住。
考え事をしていたら、大きな扉の前。
両脇に見張りの騎士。
イメージ通りの鎧。

開かれた扉、中には数人の学者風の人達。
護衛の騎士。
貴族風の煌びやかな服装の人達。
何らかの決まりがあるんだろう配置で、私を見つめる。
歩みを進め、緊張などしていないような無感覚。
ここは膝をつくのが正解かな。
ドレスが汚れるから違う?
少しの迷いに、それを読み取ったのか王様が口を開いた。
「よい、そのままで。移動して共に食事をしながら話そう。」
また移動なのか。
食事。きっと食べられる違和感のないものが出るんだろうな。
美味しいと嬉しい。
通された部屋には、豪勢な料理が並び。
他の席には、イケメンの王子様。その隣には綺麗な女性。
婚約者だろうか。もう結婚しているんだろうか。
視線が集中していたからか、王子様から挨拶。
「はじめまして。私はユーリス。隣は婚約者のエルティナ。」
とりあえず会釈して。
「よろしくお願いします。」
きっと上手い具合に変換されると信じよう。
食事マナーなど知らないし。
座るように促され、隣に立った男性に目を向けると。
「今後、あなたの警護をするフリックです。」
警護?何から守ってくれるのか。
私は命を狙われるの?
「ふ。心配はいらねぇーよ。これから結界で守られた学園に入るんだからな。」
意地悪な笑み。それも一瞬。
周りには聞こえないよう、耳元に。低くて良い声。
『結界で守られた』『学園に入る』
それは決まったシナリオのように。
強制的に決まったもの。
私の意見は?
乙女ゲームをしたことがないのだけど。
これは、何かのゲーム世界の可能性もあるのだろうか。

料理が運ばれて、進められるまま。
説明を受けつつ食す。
美味しい。
ナイフとフォーク。スプーン。箸はない。
パンに肉。野菜。見た事のない形や色だけど。違和感のない味。
食事の最後はデザート。ケーキやクッキー。見た事のあるもの。
添えられたティーセット。中身は紅茶。
香りはベルガモット。アールグレイだな。ミルクは牛かヤギだろうか。
「さて、聖女候補リセよ。」
聖女?候補?……私が?
王は言葉を連ねて説明をどんどん進める。
スクロールした覚えなどないのに。

要約すると。
明日から王子や側近の騎士と学園に通い、優秀な先生から魔法を学ぶ。
学園の休みには、聖女として教育補佐をする神官からも学ぶことがいっぱいあるみたい。
預言された魔王の復活に備え、勇者を支える聖女として冒険に出るのだとか。
シナリオが充実していますね。
私の休みは?

「あなたは聖女として選ばれ、ここに“召喚”されたのです。」

選んで欲しいなど願っていない。
むしろ帰りたい。
でも預言された魔王が復活するとこの世界は滅ぶ。


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