クズにはクズのやり方で
 私の後ろには彼がいて、居酒屋で会ったことを伝えた。

「え? 会わなかったなぁ。いたの。綾人くん」

 オーナーは彼に声を掛けた。

「いましたよ。オーナーもあそこにいたんですか?」

「いたよ、いた。まぁ、二人とも立ち話ではなんだから、座りなよ」

 オーナーはにこやかに笑って、拭いていたふきんを置いて、席を座るように手で誘導していた。

「二人ともいつものやつでいい?」

「「はい」」

 オーナーの言葉に私と彼の声はハモッた。

 お互い言葉を重ねたので「ハモっちゃいましたね」と言いあった。

 オーナーがカクテルを作っている間、私と彼は自分が考えている恋愛観について深く語った。

「京極さんさ、前に役割みたいになってるって言ったじゃないですか。それって、さっき言ったように〟型があるから〝ですよね。役割って言葉が出たのはそういうことじゃないですか?」

 私はオーナーが作ったカクテルを手にして、一気に酒を飲み干した。

 そのせいか急に酔いが回り始めた。

「……僕も分かんないんです。役割って言葉が今の状況にしっくりくるんです。僕は今幸せなのに、なんかもう当たり前になりすぎてるのかなって」

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