「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
 


 それからしばらくして、

「ただいま。
 いるのか?」
と下から滝本の声がした。

「あ、おかえりなさい。
 隠れ家カフェで作ってもらったお土産ありますよ~」
と言いながら、環奈が下りてくると、滝本は廊下を眉をひそめた。

 なんだろう?
 今日はひとりでいたかったとか?
と思ったが、

「いるのなら、一階も電気つけとけ」
と滝本は言う。

「なんでですか。
 もったいないじゃないですか」

「……帰ってきたとき、明るい光が目に入ると、なんか安心するんだよ」

 環奈の部屋の明かりは、玄関側からはよく見えないからだろう。

「なんのためにいるんだ」
と言われ、

「……なんのためなんですか?」
と訊いてしまう。

 偽装結婚のためにいるんですよ。

 あなたのために電気つけるためにいるんじゃないですよ、と思ったが、

 家の灯りを見て、ホッと息をつく滝本を想像すると可愛らしくもあった。

「今度からつけときますよ」
と言いながら、一緒にリビングに向かう。

「あ、でも、タイマーでつくようにしたら、私がいない日も大丈夫じゃないですか」

「お前、俺より、情緒ないな!?」
と言われてしまった。




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