「暁月さんに絶対服従 ~隠れ家カフェの常連日記~」
 


 ほろ酔い気分で店を出た環奈たちは夜道を歩いて帰りながら、猫を探していた。

「いないな」
「課長もお好きなんですか? 猫」

「いいや。
 可愛いとは思うが、特に猫だけを贔屓にはしていない」

 ……なにに遠慮して?

 犬かな?

 いや、ハムスターとかかも。

「だが、お前のせいで、通りすがりの猫を撮る癖がついた」

 側溝から顔を出す猫とか、尻尾を高く持ち上げて塀の上をしゃなりしゃなりと歩いている猫の写真を滝本はスマホで見せてくる。

「これはっ。
 こんなに猫と遭遇するなんてっ」

 羨ましいっ、妬ましいっ、と環奈は悔しがる。

 そんな環奈を見て、滝本は笑っていた。

「あ、そうだ、課長。
 この間、簡単に王様の気持ちになれる方法を見つけたんですよ」

「……王様の気持ち?」

「うっかり、エコバッグを全部忘れて、買い物に行っちゃって。

 行く店、行く店で紙袋とか買ってたら、すごい豪華な買い物してる気持ちになったんですよ。

 昔はそれで普通だったみたいなのに」

「ずいぶん簡単に王様になれるんだな」
と月の写真を撮りながら、滝本は言っていたのだが――。
 



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