婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
『この土地の所有権を持っているのはおばあちゃんだって、以前話したでしょ』


『うん、Contrailを始めるときにお母さんが譲り受けて、お父さんと結婚して少し経ってから二階を自宅に改装したのよね』


『そう。でも土地と建物の名義はおばあちゃんのままなの。おばあちゃん、遺言を用意していたのよ』


母の説明によれば、どうやら祖母は生前公正証書遺言を作成していたという。

母には五歳年上の姉、ひかりさんがいる。

十年前に離婚したひかりさんは私と同い年のひとり息子、瑛斗(えいと)をエステサロンを経営しながら育て上げた。

ひかりさんと母は性格や考え方が正反対なせいか、あまり仲がよくなく、最低限の付き合いしかしていない。

祖母の遺言書には自宅の処分方法など細かい記載があり、Contrailについても書かれていたらしい。


『――婚姻関係にある次代に土地建物を譲る、っていうのがおばあちゃんの、ここに関する遺言なの』


瞬きを繰り返す私に、母がため息を吐きながら告げる。

なんと祖母はContrail、土地を含めたこの家をまるごと私たち孫世代の既婚者に譲る旨を、遺言として記していたという。
< 10 / 75 >

この作品をシェア

pagetop