婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
『ちょっと待って、なんで? おばあちゃん、将来菫がお母さんと一緒にContrailで働くのを賛成してたよね? 菫の進学も応援してくれていて、新メニューを作りたいって菫も張り切って……』


『そのはずだったんだけど……姉さんに現時点で誰も既婚者がいないから遺言は無効だって言われてね。ここをエステサロンにしたいから、いい加減譲ってほしいって』


ひかりさんは以前から自社のエステサロンをContrailの場所にオープンさせたがっていた。

この辺りは私のように羽田空港内で働く人たちが多く住んでいる。

そういった人たちを客として取り込みたいらしい。

母は長年ここを好きに使用してきたのだから明け渡してほしいと言われたそうだ。

母には手頃な物件を紹介すると付け加えて。

ひかりさんの主張も一理あるが、父との思い出が多く詰まったこの家を手放すのはつらく、生きがいでもあるカフェを失うなんて考えられないと母は断わったそうだ。

その代わりに、祖母が生前住んでいた自宅マンションやほかの相続財産すべてを渡すと提案したという。

母曰く、Contrail以外の財産すべてを受け取ったほうが資産価値は大きいらしい。

ひかりさんにとって損な話ではないはずだが、ひかりさんは首を縦に振らないという。
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