婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「この度は大変ご迷惑をおかけいたしまして申し訳ございませんでした」


隣に立つ後輩とともに謝罪する。

後輩はこの事例は初めて遭遇しているため、後でもう一度きちんと順を追って説明するつもりだ。


「いいえ、大丈夫です。自宅に戻り次第送りますね。修理期間はどのくらいですか?」


「申し訳ございません……状態を確認いたしました修理工場より直接その旨をお電話させていただくことになります」
 

女性客の質問に答える。

幸いにも女性客は破損したキャリーケースを近々使う予定はなかったそうでとくに急いでいないと告げられ、小さく安堵する。
 
手順を記した用紙などの手配をしている際に女性客に何気なく尋ねられた。


「そういえば、パイロットの向さんがご結婚されたって噂で聞いたんですが、本当ですか?」
 

予期せぬ問いかけに思わず肩が跳ねそうになった。


「私たちはパイロットの方々と会社も違いますので直接の接点はないのですが、そのように伺っています」
 

事情を知る後輩は私の内心の焦りに気づいたのか、そつなく答える。


「お相手の女性も航空関係の方かしら!?」
 

興奮した様子で質問を重ねる女性に、後輩はやんわりと対応する。
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