婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「あの、お茶でも淹れようか? 久し振りに一緒にいられる夜だし、話し忘れたことがあるから起きて待っていていい?」


なけなしの勇気を振り絞り、できるだけ明るく自然に振る舞う。


「いや、遅くなりそうだから先に休んでほしい。蕗の話は、もし急ぎじゃなければ明日以降でも構わないか?」
 

きっぱり断わられて胸が軋む。

グラリと目の前が歪んだ気がした。

彼の返事に不自然さはないし十分気遣ってくれている、冷静になりなさいと頭の中でもうひとりの私が警告する。

けれど、耳を傾ける余裕がなく言葉がこぼれ落ちた。


「……私は琉生さんの理想からかけ離れている?」


口にすべきじゃないとわかっているのに、一旦吐き出した感情は止められなかった。


「頼りにならない? 江口さんと違って、私では琉生さんの仕事は理解できない? 理想とは違った、間違えたって後悔している?」
 

私の唐突な質問に驚いたのか、一瞬目を見開いた彼の表情がどんどん険しくなっていく。 


「だから、なにも話してくれないの? 現実を受け止める覚悟はできているから、隠さないで教えて」
 

あふれ出した想いを制御できず、語尾が震える。
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