婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「……ありがとう」
 

袋の中には絵葉書が入っていた。

私は自分が訪れた場所、好きな景色、絵画などの絵葉書を集めるのがとても好きだ。

一緒に暮らすようになってすぐの頃にその話をしたところ、琉生さんはフライトで各地を訪れた際、様々な絵葉書を選んで買ってきてくれるようになった。

国内とは違う風景や絵画など珍しいものも多く、とても嬉しい。
 
ほかにもお菓子や化粧品など私が興味をもちそうなものをよく買ってきてくれる。

絵葉書に見惚れる私に「今度一緒に行こう」と当たり前のように誘ってもらえる日々に何度幸せを感じただろう。

だけど、今日はいつものようには思えなかった。
 
胸の奥に大きく重い塊が詰まっているようでずっと息苦しく、一緒に食べた食事の味も会話もよく覚えていない。
 
ひとりで悩んでいても答えは出ないし、きちんと向き合うべきだと頭の中では理解しているのに、いざ彼を目の前にしたら言えない臆病な自分が嫌になる。
 
眠る前にもう一度話をしてみようと小さく決意する。
 
ともに食事の片付けを済ませ、入浴を終えた。

一緒に寝室に向かおうとしたとき、琉生さんのスマートフォンからメッセージの通知を知らせる短い振動音が響く。


「ごめん、蕗。少し確認してくるから先に休んでいて」
 

サッと液晶画面に視線を向けた琉生さんが、申し訳なさそうに告げる。
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