婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする

8.理想の人

出勤のため鳴り響いたアラームを止めようとした際に体が温もりに包まれているのに気づく。

いつの間にか眠っていた私を、彼が背後からいつものように抱きしめてくれていた。

伝わる体温と嫌な態度をとった私への変わらぬ優しさに胸が詰まり、鼻の奥がツンとする。

起こさないようにそっと腕をほどいた後、耳元に小さな謝罪をささやき、身支度を調えて家を出た。

感情のままに言葉をぶつけた昨夜はうまく寝つけなかった。

彼の態度に不安になったからとはいえ、あまりに大人げない自分が恥ずかしい。

いい年をして相手の気持ちも聞かずに癇癪を起こすなんて、みっともないし情けなすぎる。

彼はいつだって落ち着いて話し合ってくれたのにと反省しきりだった。

きちんと謝罪しようと決意しては切り出し方に迷い、さらには抱えた不安をもてあます、その繰り返しだった。

今日、彼は休みだけれど、学生時代の友人の結婚祝いの集まりがあるから出かけると以前から言われていた。

彼が帰宅するまでに話したい事柄をまとめ、きちんと謝罪しようと改めて決意し、職場へ向かった。
 
仕事中は頭を切り替えて対応していたけれど、ふとした折りに物思いに沈みそうになる。

弱く身勝手な心を必死に叱咤してなんとか勤務を終えた。
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