婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「疑わしい行動を取った俺は責められて当然だが、信じてほしい。俺は蕗の財産を横取りするつもりはまったくない。俺の友人に尋ねてくれて構わない」


そう言って、彼は友人について詳しく教えてくれた。

さらに瑛斗の動きに注意し、知り合いの弁護士に相談してくれていたそうだ。

どこまでも私のために尽力してくれていた彼を疑ってしまった自分が情けなく、申し訳なさが募る。


「琉生さんを巻き込んだのは私なのに、こんなにも考えてくれてありがとう」


「巻き込まれたんじゃない。俺が蕗を守りたいんだ」
 

温かく思いやり深い言葉に胸がいっぱいになって声が詰まる。

視界が滲むのを誤魔化そうと胸元に額を押しつけたけれど、すぐに見破られてしまう。


「俺にとって蕗はかけがえのない大切な人だから」
 

大きな手に両頬を包まれ、掬い上げられる。

綺麗な二重の目が真っすぐに私を射抜き、目をそらせない。

整った面差しを傾けた彼が私の唇に自身のものをゆっくり重ねる。
 
啄むような口づけは、彼の想いを表現するように甘く長いものに変化していく。


ああ、もう本当に。


この人はどこまで私を好きにさせるのだろう。


情熱的なキスと伝わる温もりに酔いしれる一方で、江口さんからの忠告が心に小さな影を落とす。

彼の想いを疑うつもりはない。

だけどこの期に及んでまだ琉生さんの〝理想〟を尋ねる勇気がもてない。

意気地無しで臆病な私は今も自信を持ちきれずにいる。
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