婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする

1.謎の遺言と最悪の出会い

制服に着替え、肩下二十センチほどの長さの黒髪がきちんとまとまっているか、前髪の崩れとともに再度チェックする。

母親譲りの目尻が少し上がった二重の、際に引いたアイライナーの滲みを少しだけ直す。

五月下旬に入ったばかりなのに、気温は夏のように日々高くなっている。

夜明けが早くなり、出勤時に綺麗な紫がかった朝焼けを目にできるのは嬉しいけれど、滲む汗でメイクや髪が崩れるのはいただけない。


「おはよう、(ふき)


更衣室を出たところで同期の親友、岡林(おかばやし)未歩(みほ)に声をかけられた。

身長百五十五センチの私より約十五センチ高い、黒いショートカットヘアの未歩を見上げる。


「未歩、おはよう。もしかして今日、早番?」


「そう。今日こそ(むかい)さんに会えるかもしれないから、いつも以上にがんばるわ」


早起きが今も苦手な未歩が、普段以上に気合い十分な理由がわかって苦笑する。


「昨日も動画を見ていたんだけど、以前より前髪が短くなっていてカッコよかった! 艶やかな黒髪に制服が似合いすぎる」


私、湯沢(ゆざわ)蕗と未歩はスターブルー・ライト航空株式会社のグランドスタッフとして勤続六年目を迎えた二十八歳で、羽田空港内で勤務している。

私の勤務先の親会社は今年「世界で最も素晴らしい航空会社ランキング」で五位となった、日本を代表する大手航空会社、スターブルー航空株式会社だ。
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