婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「好きな人にだけ素直になれない男も、本心を伝えられない臆病な男も存在するから」


納得していない私の心情を読んだような物言いに心が波打つ。


……それは、誰の話?


ふいに湧き上がった疑問を私たちには関係ないと即座に打ち消す。


今はただ、無事に土地を相続できることだけを考えなければ。


自身にもメリットがあるとはいえ、そのために琉生さんは協力してくれているのだから。


「わかりました、では瑛斗には気づかれないように気をつけて、母と妹にも口止めします」


まだスマートフォンを確認していないけれど、きっと菫から昨日送ったメッセージの返信が来ているはず。

改めて説明しなくてはと頭の中のメモに記録する。


「ああ、気をつけて。俺は蕗を奪われたくないし、引き下がる気はないから」


そう言って、ふわりと頬を緩める姿に鼓動がひとつ大きな音を立てた。

落ち着いて、これはあくまでも契約結婚相手を失いたくないという意味。

私に特別な想いを抱いているわけじゃない。

わかっているのに、昨夜からの優しい仕草や温かな眼差し、思いやり深い物言いに心が乱される。

体の奥がじんわりと熱くなるこの感情はなんだろう。

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