身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
 閉店後、私は父さんの指導の下シュークリームの生地を焼く練習に励んでいた。いつかは父の味を継ぎたいと、毎晩遅くまで練習に当たっては彼の味の習得に励んでいる。
 
 そんな中、静かな空気を切り裂くように電話が鳴った。父さんのスマホからだ。

「もしもし? ああ、美咲か。どうしたんだこんな時間に。消灯時間は過ぎてるだろ」

 美咲は私の姉さん。数年前から膠原病と闘病中の彼女は2週間前に高熱を出した。検査の結果、肺炎が見つかり、以後かかりつけである翠総合病院で入院生活を送っている。黒いストレートのロングヘアとぱっつん前髪が特徴のとっても綺麗な美人さんで、自身もデザインを手掛けているロリィタ服を集めては着るのが趣味だ。でも病気になってからは外出する機会もめっきり減って、顔もむくんだりと色々大変なようで心配が絶えない。
 いつもは姉さんとメッセージアプリを通じて毎晩やり取りするのが普通だ。今日のランチは鮭のムニエルだったとか、そんな話がメイン。
 こんな夜遅くにわざわざ電話をかけて来るなんて。姉さんは電話を掛けられるくらいにはピンピンしているのだろうけど、それでも何かあったのかと一気に不安に襲われる。

「は、え? 翠一族の御曹司さんが美咲に求婚?!」
「え?!」

 予想だにしていなかったワードを受け、まるで頭を殴られたかのような強い衝撃を与えた。それゆえに持っていたシュークリームの生地を手から落としそうになる。
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