身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
「佑太さん……」

 訳が分からない感情に、しまいには目の奥が熱くなってきて涙があふれ出てきてしまった。こんなに情緒が不安定な時はない。

「詩織。君の気持ちはよくわかった」

 そっと彼が両手を私の背中に回す。これまで何度か彼に抱かれてきたけど、一番優しくて暖かいかもしれない。

「佑太さん……」
「俺の事をこんなに心配してくれてるんだってな」

 ぎゅっと彼の腕にかかる力が増した。苦しくなっているはずなのにもっと締め付けてほしいと願ってしまう。そうでないと心配の気持ちがまた強くなってしまうから。

「俺は君が好きだ。君がいるから、どんなにつらい事があっても頑張れるんだ。間違いない」
「私がいるから……?」
「そうだ。マフィンも食べたし全快だ。出来ればおかわりもしたいんだが」
「勿論作る!」

 と言ったものの、彼は中々私を手放してはくれない。

「佑太さん? どうしたの? 早く食べないと冷めちゃうよ?」
「あっいや……あと少しだけ君の匂いとか、嗅いでたいなと思って」
「えっ」

 そんなダイレクトに言われると、身体の奥から一気にむずがゆいのがあふれ出してくる。
 
「あっちょっ」

 顔を右肩に埋めてすんすんと鼻を鳴らす佑太さん。完全に大型犬のそれだ。しかも彼の首元からは、薔薇のような甘い香りが鼻の奥をついて来る。
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