ながされて、絆されて、ふりむいて
二人で乗り込んだエレベーター、9階と10階を点滅させてから"閉"にコーラルラメを乗せた人差し指を預ける。
そんな、わたしたちだけの空間で、ぽつりと名波さんが言葉を落とした。なにかを訂正するみたいに。
「今日のは偶然に見せかけた、必然?」
「え?」
「なんとなく児玉さんが泣いてそうで」
…………泣いて、そうで。
明確に、わたしだけに向けられた言葉を頭のなかで反芻して、咀嚼しようとする。後方に立つ彼へと振り返れば、匂いと同じくらいに甘さを携えた双眸に捕まった。