ながされて、絆されて、ふりむいて
「名波さん、いつもこの時間ですか?」
「んー、まあ。いつもはもうちょっと早いかな。今日は偶然」
わたしもピークを外すためにすこし早めに出社しているけれど、名波さんはそれより早いんだ。ということは、凪と同じくらいかな……って。
「(また凪のこと考えてる、だめだめ)」
わたしのわるい癖だ。いつも頭に凪が浮かんでしまう。
もう、そんなことしてたらだめなのに。凪をわたしの思考回路のいちばん手前から追い出さないと。
「偶然で、カフェオレ奢ってもらっちゃって。ありがとうございます」
今の時間から15分ほど後ろになれば、エレベーターホールは多くの社員で溢れる。一回じゃ絶対に乗れないけれど、この時間ならそこまで混まないのだ。
運良くエレベーターはわたしたちだけで乗ることができた。運が悪ければ各駅停車で、自分のフロアにたどり着くにも時間がかかってしまうから。
ストレートに9階まで届けてくれるだけで、朝のストレスが蓄積されずに一日を始めることができる。
「……まあほんとは、」


