ながされて、絆されて、ふりむいて



だけどまた、同じことをしようとして、くちびるが次を紡ぐことを止めない。



「明日、やっぱり行きます。……まだ、空いてますか?」



名波さんは表情も変えずわたしに視線を寄越したままだった。返事の代わりのように、カバンからスマホを取り出して耳に当てた。


明らかに誰かに電話をするモーションにハテナが頭のうえに乗る。



「もしもしー、斎藤?今いい?あ、もう仕事中?はえーよ」



斎藤と呼ばれたひとは始業時間より45分早い8時15分、すでにお仕事中らしい。


凪がアサインされてたプロジェクトメンバーの、斎藤さんだろうか。凪が聞かせてくれる話のなかに出てきた気がする名前で、記憶の散らばりを手繰り寄せてみる。




< 170 / 208 >

この作品をシェア

pagetop