ながされて、絆されて、ふりむいて
「明日の飲み、俺パス。……は、なに?代打?俺の代わりなんて誰も務まんねーだろ……って、いや、茅野が空いてる。じゃ」
この会社に斎藤さんはたくさんいるけれど、たぶん、想像通りだ。"茅野"と意識を引っ張る名前を残して、半ば強引に電話を切っていた。
……凪の名前が出てきたことに引っかかるのも、もうなしだ。
そして何事もなかったように、再び名波さんはわたしに笑みを向けた。
「明日、もちろん空いてるから飲みに行こう」
「空けて、くださった……」
「んー?空いてたよ」
「……忙しそうなのに、ラッキーです」
あくまで「もともと空いてた」というスタンスの彼に乗っかる。目の前で空けてくださったけれど。
「じゃあ明日、1階ロビー集合で。残業になりそうだったらチャットして」
「はい、わかりました。名波さんも残業になりそうだったら教えてください」
「俺はなんない、つーか来週の自分にぶん投げるから大丈夫。じゃあまた」
ぴんぽーん、とエレベーターが9階に着いた合図を響かせた。箱の中でひらひら手を振る名波さんに小さくお辞儀をして、扉が閉じるのを見送った。
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