ながされて、絆されて、ふりむいて
名波さんが足を止めるから、つられてわたしも止まって、見上げる。やっぱり高い。藍色の空を背景にした彼の双眸は、いつも以上に色香が滲んできらきらしているように見えた。
それからゆっくり、名波さんの大きな手がわたしの頬に伸びてきて触れた。わたしにその手を振り払うことはできない。
「……はじめて、ぜんぶ更新してあげよっか?」
「……え、何言って、」
「慰めてあげる、児玉さんのこと」
思いがけない言葉だった。受け取る準備をしていない文字列が鼓膜を揺らす。ひんやりつめたい温度が、頬に溶けてゆく。
"凪、慰めてあげる"
受け取った台詞がトリガーとなって思い出される、わたしが過去に放ったこと。ただ精一杯で、必死だった。たぶん、わたしの瞳は揺れている。
あの日。きみに笑ってほしくて、泣いてほしくなくて。
──こっち、向いてほしくて。
────「駄目」