ながされて、絆されて、ふりむいて
わたしは凪みたいになんでもできるわけじゃないからモテないし、恋愛とかそういう類には無縁だと思っていた。
……一気に自分事になったのは、暑さと蝉の鳴き声が本格化した7月の真ん中だった。
通っていた塾で講師の先生と一緒に少しだけ居残りをした、そんななんてことない日。
「質問、丁寧に答えてくださってありがとうございました。きちんと理解できました」
「うん、それなら良かった。児玉さん賢いから大丈夫」
英訳で、腑に落ちない答えがあった。講義が終わった後、単語を知っているだけでは読み解けない英文の日本語訳の解説をお願いしていた。
温かな言葉をくれるけれど、わたしは全然賢くないし、学校の授業についていけるのは先生のおかげだった。