スケッチブック

余白のとなりで ひだまり色

作楪とポチ

配信が終わった部屋は、
静かだった。
作楪は、
椅子にもたれて、息を吐く。

「……今日も、よく喋ったな」

その足元で、
しっぽが床を叩く音。
ポチが、
当然みたいな顔で座っている。

「キミは、
恋の色物語なんて、興味ないよね」
言うと、
ポチは首をかしげた。

それから、
立ち上がって、
作楪の膝に前足を乗せる。

——撫でろぉ。
無言の要求。
作楪は、
苦笑して、頭を撫でた。
ポチは、
満足そうに目を細めて、
しっぽを振る。

画面の向こうでは、
誰かが、恋を始め。
誰かが、
ようやく過去を抱きしめ。
誰かが、
一歩、前に進んでいる。

そんなことは、
知りもしない。
ポチは、
ただ、今を生きている。

作楪が、
小さく言う。
「……みんな、頑張れぇ」

ポチは、
タイミングよく、
「ワン」と鳴いた。

まるで、
同意するみたいに。
それから、
画面に向かって、
しっぽを振る。
誰に向けるでもなく、
全力で。
——大丈夫だぞ、って。

物語は、
ここで、
そっと終わる。
余白のとなりで、
ちゃんと、
温度が残ったまま。

大好きだった、大好きな君へ
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