悪女と罵られたので退場させていただきます!

21.理由4

「お父様、もしかして、今まで私が他国を飛び回っていたのは……」

「ヴァレリー公爵家を危険視する帝国貴族に目を付けられる恐れがあったからな」

「私の婚約者を帝国以外から探してきたのも……」

「帝国貴族の中から婿を取るのは危険だと判断したのだ」

「それで……」

 どうもおかしな点が多かったので変だとは思いましたが、お父様も貴族。政略結婚は当たり前。ましてや帝国貴族になったのだから、その利点を生かすのは当然だと私も考えていました。外交を全面的に推し進めているかのような縁組話。私としては帝国貴族から碌な縁談がなかったから?と軽く考えていましたが、今思うと早い段階から危険視されて、手を打たれていたのですね。
 ごめんなさい、お父様。
 そんな事など露ほども知らずに、「もっとまともな男性を婚約者に据えればいいのに」とか「いっそのこと帝国貴族の常識的な男性を婚約者にすればいいのに」とか「お父様ってもしかして男を見る目がない?」なんて思ってましたわ。
 本当にごめんなさい、お父様! でも、そうよね。
 いくら真面目でまともで常識的な男性でも、私達に危害を加えかねない相手では……ね。
 危害を加えなくても公爵家の乗っ取りを考えかねない。
 そういった観点からも他国の王族や貴族との縁組を望んでいたのでしょう。
 少なくとも、相手が私達を害する心配のない相手でなければ、ダメだったのでしょうね。
 お父様は「今は色々と調整してるところだ」と溜息交じりで仰っているので、私が知らないところで、かなり面倒な事になっているのでしょう。
 お疲れのご様子なのも納得できます。

「ブランシュ、話は以上だ。時間を取らせて悪かった」

「いいえ。貴重なお話でした」

「皇太子殿下の件については内密に。それと、殿下がこれから先、あのままであったとしても問題がないように我々で動いているので安心していい。殿下との交流がこのままなくなってもかまわない。だが、もし殿下がブランシュと仲良くなりたいと言ってきたら……あぁ、それはないか。……そうだな。じりじりとにじり寄ってくる行動をしてきたら、決してブランシュから近づいてはいけない。殿下が近づいてくるのを待っていなさい」

 お父様。
 皇太子殿下は人に懐かない猫ですか?
 違いますわね。
 人間不信でした。
 だから辛抱強く待つのは正しいのかしら?よく分からないけれど。

 こうして、私の長い一日がようやく終わりました。
 これからのことを考えると不安だらけですが、理由を知れたのは良かったと思います。
 皇太子殿下のご様子ではこれから先は没交渉になるでしょう。
 お父様は「待っていなさい」とは仰っていましたが、はっきり言って、望み薄でしょう。
 まあ、私からすれば無理に交流をしなくても良いというお墨付きを貰ったも同然ですので、楽になりましたわ。
 ……と思っていたのですが、それが崩れ去るのは意外にも早かったのでした。

「ブランシュ様。皇太子殿下がいらっしゃいました」
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