悪女と罵られたので退場させていただきます!

20.理由3

「ヴァレリー公爵家は、少し難しい立場にいる」

「難しい立場、ですか?」

「そうだ」

「それはヴァレリー公爵家が帝国に置いて新参者の貴族だからでしょうか?」

「それもある。だが、それだけではない」

 お父様は、一呼吸置いてから話を続けました。

「我らは()()()だ。そのよそ者が短期間で手柄を積み上げてしまった」

「要するに、やり過ぎてしまった、という事でしょうか?」

「その通りだ。そのおかげで、帝国貴族達の反感を買ってしまった」

「そうだったのですね……」

 手柄を立てすぎるのも、考えものという事ですか。
 確かに、ヴァレリー公爵家は新参者といえる立場です。
 亡命貴族でもありますし、帝国貴族の主流派からすれば面白くないのも理解できます。
 ですが、まったく関係のない亡命貴族、という訳でもありません。

「お父様、私達は帝国の皇室の血を引いています。それでも警戒されてしまっているのですか?」

「皇室の血を引いていると言っても元は他国人だ。それに皇室の血を引いている貴族はこの国には大勢いる。嘗ての祖国と違って血筋による優位性はないに等しい。元からの帝国貴族にとっては新興貴族と大差ない」

「それはそうかもしれませんが……」

「ブランシュ、お前の言いたいことは分かっている。新参者だからこそ優秀さを見せつける必要があった。そうでなければ、無能と見なされ、帝国貴族から軽んじられていただろうからな」

「はい」

「働き過ぎて帝国貴族の反感を買う事を想像できなかった、私の落ち度だ。皇帝陛下の傍近くに仕えている貴族ほど、ヴァレリー公爵家を危険視している」

「それはまた……」

 心なしか、お父様の顔色が悪いように見えます。
 声にも疲労が滲み出ているような……。
 気のせいではないでしょう。
 かなり、お疲れのご様子。

「これ以上、ヴァレリー公爵家が功績を上げるのはまずいと言うことですね」

「そうだ。下手をすればそのしわ寄せはブランシュ、お前に来る恐れが高い。ああいった連中は人の足を引っ張り自分の価値を高めようと画策するのが常套手段だからな」

「つまり、皇太子妃にならなければどうなっていたか分からないという事でしょうか?」

「否定はできん」

 何とも恐ろしい話ですね。
 でも、お父様の顔色からすると、かなり深刻な状況だったようです。
 そうですか。
 これで納得しました。
 私が側妃ではなく、皇太子妃になった理由が。
 皇帝陛下の『褒美』と表向きには言っていましたが、実際は『保護』だったのですね。
 皇太子妃に危害を加えることは皇室に弓を引くも同然。
 皇太子妃の実家であるヴァレリー公爵家を害することも難しくなる。
 そう考えたのでしょう。皇帝陛下は。
 それにしても、私が諸外国を飛び回っていた間に、これほど厄介な問題を抱えていたとは。
 まったく気が付きませんでしたわ。迂闊でしたね。
 こうなってくると今までのお父様の行動にも色々と裏が見えてきますね。腑に落ちない点もいくつかありましたし……。


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