悪女と罵られたので退場させていただきます!

10.言い訳1

「ブランシュ嬢、世間では何かと私と王女殿下のあらぬ噂が囁かれておりますが、全て根も葉もない噂です」

「まぁ、そうなのですか?」
 
「はい。先程も申し上げましたが、私と王女殿下の間には何もありません」

 噂の渦中の人であるフリッド様が私の元を訪ねて来てくださいました。
 随分と遅い言い訳、と思わなくもありませんが、こればかりは致し方ありません。
 恐らく、最近になってやっと自分と王女の噂を知ったのでしょう。本当に遅い、としか言いようがありませんが。

「ですが、お二人の仲の良さは有名ですから。ご一緒に過ごしていらっしゃることが多いのも本当のことですもの。深夜に王女殿下の寝室から出て来られたという噂もありますわよ?目撃者もいるようですし……」

「誤解です!」

「では、違うと?目撃した者は、見間違いをしたと?」

「それは……」

 私の質問に言葉を濁すフリッド様。
 これは寝室に出入りしていたに違いありません。はっきりと「違う」と言えばいいものを。この方は変なところでバカ正直な部分がありますわね。

「私は何も責めている訳ではございません。ただ、事実確認をしているだけですわ。誤解しないでくださいまし」
 
「はい」
 
「それで……やはり真実なのですか?」
 
「いえ、そのようなことはございません。深夜、王女殿下のお部屋を訪ねたのは本当ですが、それだけです」

 幼児ではないのですよ?いい年の男女が一緒に夜を過ごしているだけ、と弁明して信じる者はまずいません。たとえそれが本当だとしてもです。
 彼はもう少し周囲の目を気にした方がいいと思いますわ。

「分かりましたわ。信じましょう」

「ありがとうございます」

 私の返事に安堵したように息を吐くフリッド様。
 心なしか顔色が明るくなったような気がします。
 なんでしょう、面白くありません。
 誤解を招く言動をあれだけしておいて、なんですの?
  私が信じると言った途端に安堵するなんて。
 本気で信じている訳がないでしょう!
 フリッド様にはこれっぽちも信用なんてしていません!
 婚約を継続するにせよ、破棄するにせよ、私が不利になる言動をする筈ありませんでしょう!どちらに転んでも私が優位に事を運ぶための布石に決まっているでしょうが!
 私を疑いもせず、警戒もしない婚約者。
 あっさりと信じてくれたことに安堵しているのでしょうが……本当にバカですわね。
 ちょっと虐めてやろうかしら。
 
 この時の私は、父からの過剰な期待に辟易していたのです。
 婚約者の噂であれこれ。
 好奇心旺盛なバカの相手に対して、ストレスが溜まってもそれは仕方ないことでしょう?


< 77 / 89 >

この作品をシェア

pagetop